コロナウイルスに怯えながら時給980円の工場バイトで生を繋ぐ60歳の悲哀

困婚強制社会」そんな言葉を日本で見かけるようになって久しい。
ちょっとした「踏み外し」がきっかけで、二度と這い上がることができなくなる社会、それが今の日本なのかもしれない。
事業に失敗し家も店舗も失ったKさん(60歳・男性)もその1人。
 

事業失敗後は時給980円のバイト生活に

サラして開業したマッサージ店の経営が鳴かず飛ばずで、あえなく倒産。
そのまま親から譲り受けた家を改装した家兼店舗を失い、自己破産。
目の前には借金だけが残った。
その後は朝4時に起床し、5時から11時までの早朝バイト、夕方から夜遅くまで別のバイトを複数こなす生活を6年間していた時期もあったという。
現在は惣菜を作る工場で時給980円のバイトをし、1Kのアパートに暮らしながら生活を繋いでいる。
週払いの給料で、年収にして190万円ほど。
彼は言う。
「チャンスがあればもう一度ビジネスを学んで、以前失敗した起業に再チャレンジしたい」
意欲としては立派だ。
実際彼は、今もなけなしのお金で本を買って「起業志望者」として生きている。
Q.本ではどのようなことを学ばれているのですか?

「成功哲学や流行りのビジネスについて学んでいます。ただ本って結構抽象的な内容が多いので、もっと具体的なノウハウを知るためにネットでいろいろ調べていますよ」

 
Q.具体的にはどんな起業を学んでいるのですか?

「ネットを使ったビジネスの起業を学んでいます。先日もちょっとした起業塾に入ってみました」

 
Q.生活に苦労されているご様子でしたが、起業塾に入るお金はあったのですか?

「最初塾の案内があった時は諦めていたのですが、塾の主催者の方が本当に親切な方で、ダメもとで相談したら支払い方法を融通していただいたので、私でも入ることができました、ただ・・・」

 
Q.ただ?

「実際にカリキュラムを見てみたのですが、難しそうだったので1日で辞めてしまいました(笑)」
「主催者の方は初心者向けの取り組み方やもともとサービスにあったサポートを活用してほしいと親切に言っていただいたのですが、結局1日で辞めました」

 
決断の速さはある意味起業家向きなのかもしれないが、私は聞いていて「少しの違和感」を覚えた。
たった1日で挑戦を諦めてしまうような人に、本当に起業家が務まるのだろうかと。
確かに決断の速さは重要なのかもしれない。
ただ十分な取り組みもせずに早々に撤退するのは単に投げ出しただけなのではないかとも思ってしまうのである。
 

コロナウイルスで収入ゼロの不安に襲われる日々

んなKさんには起業成功以上に気がかりなことがあるという。

「例のコロナウイルス騒動で現場がピリピリしています。先日も10人いるうちの1人に発熱者が出て病院に行きました。結局ただの風邪で済んだのですが、もしコロナだったら即刻工場が閉鎖されます」
「社員の場合はその間も給料保証があるので良いですが、私のようなバイトはクビにならなかったとしてもその間の収入はゼロですからね」
「こんな生活でも昨年よりは収入が増えた方なので、税金の支払いもありますし・・・早くネットで稼げるようにならないと、と思っています」

 
「現在60歳、今のバイトがダメになれば、このご時世、自分の年齢での再就職はさらに難しい」と、やり取りの最後に、Kさんは静かに漏らした。
コロナ騒動で業種業界問わず不況の波に呑まれつつある今、今回のKさんのように収入に不安を抱えたまま生活を続けざるを得ない人が増えていくのかもしれない。
貧困強制社会。運良く「浮上」の機会を得られた者以外には、変わらず厳しくも酷な生活が待ち受けている。
 

■編集後記

今回の記事は東洋経済でよく見る、全く救いのない「僕らは貧困強制社会を生きている」のテイストで書いていました。
話は全て実話です。
先日私のコンサルに参加して1日で「引退」した大阪在住のKさんの話です。
事業に失敗してバイト生活、そんな生活が嫌になって何とか起業したいと思い、私のところまで来たようです。
私もビジネスの世界は長い方(from 2011)なので、Kさんのような方でも実践できるプログラムは数パターン用意していました。
当然、ただカリキュラムを渡して終わりではなく、フルオーダーメイドのサポートサービスでバックアップしていくつもりでした。
それはこれまでの参加者にもそのようにしてきたからです。
でも、残念ながら、Kさんにはその意思が届かなかった。
 
Kさんからすれば、今から挑戦するビジネスよりも、もしかすると明日閉鎖されてしまうかもしれない工場のことで頭が一杯なようでした。
私からすれば、「だからこそ一刻も早くネットビジネスで稼ぎたかったのではないのか?」という心のツッコミがあるのですが。
Kさんが今後、この社会で這い上がることができるのか、私はわかりません。
 
ただこの一件でいくつか思うことがありました。
結局、「成功に年齢は関係ない!ケンタッキー・フライド・チキンを作ったあのカーネルサンダースだって借金をしながら60歳で起業をした!」と言ったところで、肝心の本人に意思の力が無ければやっぱり無理だということ。
ビジネスで最速で最大の結果を出す、その「答え」を掴みながらも自ら身を引いたKさんのような人は今後、東京のチンピラネット起業家が発信する「SNSで月収1000万!」とか「世界の富裕層とコネクションを持つことで実現した秘密の富裕層コミュニティで月収1億円!」みたいな情報に呑まれていくのでしょう。
いったん足を踏み外した人間は正常な思考ができなくなり、楽な方楽な方へ流れがちだからです。
無論、その「楽な方」というのは楽でもなんでもなく、そこで話されていることは全てが虚であり、何も得るものは無いのですが。
 
「成功に年齢は関係ない」
この考えを否定するつもりはありません。
ただ1つ言うなら、ほんとうに年齢に関係なく成功したいなら、最後までやり通す意思をもって、とにかく動けるうちに、思考が回るうちに、早々に動き出すのがやはり最善であるということ。
それが例えば10代や20代であるなら、もうそのまま若さを最大の武器にして戦えばいいでしょう。
それが例えば30代~60代なら、社会で揉まれたからこそ語れるリアルを武器に、「世のすべてを理解した勝ち組気取りのガキ」には絶対語れない言葉で勝負すればいいだけの話です。
そんなお話でした。
■著者プロフィール



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